今回の村上ファンドの代表村上世彰氏の一件はインサイダ
ー取引疑惑ですが、それはライブドアの株式取得が証券
取引法に違反しているのではないかというものです。
証取法では発行済み株式数の5%以上の大量買い付け
などの未公表情報を知った者が、その公表前に株を
購入することをインサイダー取引として禁止しています。
ただ証取法では、大量買い付けの明確な認識がないまま、
株を購入した過失犯は、罪に問えないことになっています。
村上氏の逮捕前の弁明では、この過失を強調している
ので、今後検察とどのような係争となっていくかは
よく分かりませんが、ライブドア関連で全ての証拠を
検察が握っているので、村上氏が勝つことは難しいと
思われます。
村上氏はほぼ私と同じ年ですが、あれだけの資金を動か
せたということではすごい人だった気がします。ただ、
M&Aのプロ中のプロと自任しながら、インサイダー
取引疑惑で捕まるのはプロとは言えず、堀江被告同様、
生きるのを急ぎすぎたと思われます。
村上ファンドの手法は、基本的には割安に評価されて
いる会社の株式を買って、その会社の資産を売却して
利ざやを稼ぐ(その手前で会社資産を売らせたり配当
させたりしている)もので、M&A業界では初歩的な
手法です。
日本の株価は企業の実際の価値よりも安く取引されている
会社もあり、そのような会社がM&Aの標的になる訳です。
自分では経営能力がないので、会社を買収してしまうまで
には至らず、その意味では日本の会社体系の中での
日本的なM&A改革者と言えそうです。
特に日本企業の中では、同族経営のまま一族が企業経営
している場合が多く、第三者的に見て非常に非効率なこと
(豊富な現預金を持ちながら、投資もせずに銀行に預金
をしていたり、配当金として株主にも還元しないような
資本効率の悪いこと)をしている場合もありますので、
そのような会社にはいい刺激となったでしょう。
ただ、その手法が短期的に株価を吊り上げたり配当を
受けた後に投資家が集まってきたところで高値で売り
抜けてしまうというようなことを繰り返していたので、
倫理的にも問題でハゲタカ・ファンドと呼ばれても
仕方がないような気もします。
私が見ている限り、日本でのM&Aは2007年以降、
時価評価の高い米国の会社が自社の株と日本の上場会社
を株式交換で買収できるようになると、一気に加速
するような気がします。
そのような状況になった時に、日本企業はどのように
対抗するのか、対抗できるのかが今回の事件を背景に
法整備としても審議され、企業としても対応を考えて
おくべきでしょう。
今回の村上氏の1件で、M&Aの全てが悪いという
ようなイメージが作られることを危惧します。
M&Aは、本来的には会社合併と買収であって、
既存事業の拡大や事業の多角化が短期にできるもので、
1+1=3となるようなシナジー効果を目指して行う
もので、自社が単独で事業進出する場合に比べ、既に
ある会社を買収することで時間を買うメリットが
あります。
今後、中小企業の事業継承も含め、日本企業が合併や
買収によって企業を強くしたり、国際競争に対抗できる
体力を持てるようにする手法としてのM&Aは拡大して
いくことでしょう。
アメリカでは1980年代にジャンクボンドの帝王である、
マイク・ミルケンが、ジャンクボンドを発行してLBO
(レバレッジド・バイアウト)で米国経済再生に貢献
しましたが、今後日本でも、ジャンクボンドを発行して
被買収企業の資産を担保に会社買収をするような人が
出てくることも十分予想されます。
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2006年06月12日
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